文学批評
 『コンセント』

カバナス・セイジン
(2001.12)
 
 先日、文庫版が出た『コンセント』。著者、田口ランディ。最近、話題の作家である。なにが話題かといえば、まあいろいろ。まずひとつあげれば、もともと、ネットマガジンでコラムを書くところから出てきた作家だということ。文芸誌で賞を取ってデビューして本を出して…っていうパターンの外から。インターネットからデビューしたってことで、ネット時代の新作家みたいな扱い。同じく、ネットの文学賞から出てきた川上弘美と共に、話題になった。

 もっとも、文芸誌が先細りになってきている昨今、そんなことは別段珍しいことではないのかもしれない。ネットデビューだからどうこうといった、小説上の特徴みたいなものもあんまり感じられない。古風とは言えないまでも、わりとオーソドックスなスタイルの小説である。では、話題になるべきところは、いったいどこか。

 『コンセント』はまず、はっきりとした「現代小説」である。引きこもっていた兄が死んだ。その足跡をたどる妹。兄はなぜ生きるのをやめてしまったのか?現代の病理、なんていう言葉が出てきそうな筋立てである。そして実際、話は精神病理にまつわる蘊蓄をはさみつつ進むのである。分裂病から境界例から、仮面鬱に神経症。適度に分かりやすく噛み砕かれた、病理現象が話題に上る。それが、シャーマンや原始記憶といった人類学っぽかったり宗教オカルトっぽかったりするネタにつながっていく。

『コンセント』

田口ランディ著

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