ライトノベル批評
 キノの旅U  

カバナス・セイジン
(2000.12)
 
 続編、パート2、第二段…映画にせよゲームにせよ、ろくでもないシロモノが多いのが世の常。要するにネタがつきてくるという問題がある。よく言われる話だけれど、もともとはごくフツウの刑事がたまたまビルを占拠したテロリストと戦うことになり悪戦苦闘…という設定だった『ダイハード』はその後、2では巨大空港、3ではニューヨーク・シティー全体が舞台という、分かりやすいスケール拡大を続け、結果すっかりバブリーになった。ブルース・ウィリスの気弱な困惑は、次第に苦味走った苦笑に変わり、いつしか典型的なクール&ワイルドなアメリカン・ヒーローの顔。そして最後にはとにかくなんとかして解決してしまう。この「なんとかして」というのがうさんくさいもので、結構いい加減に「なんとかなって」しまう。細かいギミックを考える手間が省かれた結果。つまり、キャラクタが出来上がってくると、それによっかかっていればとりあえず安泰で、技巧的な部分は、作ってるほうからすれば面倒だし、極端な話、見ているほうからしてもジャマになってくる。かくしてアホなヒーローがとりあえずドンパチやってるという映画が作られる。パート2、パート3、続、続々、新、最後の、続・最後の…。関係ないけど、ファイナルファンタジーはいつファイナルになるのだろう?あれもどんどんバブリーになってゆく。
 あてどもないキノの旅はまだまだ続いているようで、『キノの旅・U』が出版となった様子。といってこれがバブリーになってゆくのかというと、そういう感じでもない。もともとが、ばらばらのショートストーリーのよせあつめのようなもので、パート1のほうからしてなにか全体としての統一があったわけじゃないから「また新しいの出来たので」といった雰囲気。季節の野菜が取れましたみたいな、そういった感じで。
『キノの旅U』
時雨沢恵一著
イラスト
 黒星紅白
電撃文庫
(2000.10)
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