書評  
『物語の体操 みるみる小説が書ける6つのレッスン』
タマガワヒロ
(2000.11)
 
 では、例をあげてみたいと思います。まずは、マンガ制作における5つの技術。
それは、1.デザインワークやイラストの技術 2.設定 3.ストーリー 4.マンガとしての演出 5.既存の作品のリアレンジ の5つです。この本では3を身につけてもらおうということです。ちなみに、同人で一番必要な能力は5ということでしょう。もう一つあげると、私小説の問題です。文中において使われている「私」という語が誰を指しているかと言うことです。これは、私が以前「正しい台風の起こし方」の評論で述べた作中で文の主体が作中で変わらないということも関わってくると思います*。それはともかく、著者は、つげ漫画をノベライズするという課題の説明の中で私小説の問題に触れ、日本語、日本文学における「私」について分析しています。
「物語」という観点から、オタクカルチャーそして、その比較対象として「文学」までを扱った批評として、この本は優れたものです。このサイトをご覧になるような方なら、是非とも、一度お読みになっていただきたいと思います。ただ、小説のマニュアル本という切り口もいいのですが、体系的な理論として著者の考えを読んでみたいとも思ってしまうのは私のわがままなのでしょうか?なぜなら、この本は、書店ではおそらく、サブカルや漫画評論のコーナーではなく、文芸書の文章の書き方本のところにしかおかれないでしょうから・・・
*『LogicalProduct vol.1』(夏コミ2000.8発行)「書評『正しい台風の起こし方』」タマガワヒロ著を参照
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