文学批評
 『ニッポニア・ニッポン』

カバナス・セイジン
(2001.9)
 
アニメキャラ以外の何者でもない、ここまで薄っぺらなキャラクターが、かつて小説の言語で書かれたことがあっただろうか。全てがグロテスクなまでに誇張されたジャンクな作品世界。そこでは、浅はかで紋切り型で、幼稚で取るに足らないものほど、よりリアルである。

 「意図は分かっても…」という先の選評はつまり、意図もなにも、はじめから何一つ分かっていないことになる。「力となって押し寄せてくる」小説とはいったいなにを指すのか?世代の差と言ってしまえばそれまでだけれど、この感受性の断絶ばかりは如何ともし難いものを感じる。『ニッポニアニッポン』は、間違いなくすごい傑作、あるいはケッサクである。現実味のない、薄っぺらな情報だけで成り立っている、バカバカしい出来事だらけのこの小説が、にもかかわらず我々にとて最もリアルであること。同時代という、大袈裟でややもすれば反動的な言葉で表現したくなるような、そんな感覚を、この小説からは受けた。それが良いことなのか悪いことなのかは、よく分からない。

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