マンガ批評
 ネットワーク・ポプリ  

タマガワヒロ
(2001.3)
 
 まぁ、それは、それとして、この作品の中で自分と他者との関係を語るときに出でくる比喩が「辞書」という言葉。この作品は、恒平がすんでいるポプリポットという街にメアリが引っ越してくることにより、ネットだけのつきあいだった二人が実際に逢ってつきあいを始めるという軸と、もう一つ、ポプリポットの中央の都市からの新市街と昔からの旧市街の対立という、いわば住民同士の階級対立の軸という二つの軸で構成されています。そして、もちろん外からやってきたメアリは新市街の住人、恒平は旧市街の住人であり、この二人の恋が住人たちの架け橋に・・・と、まぁ、実際にはそこまでいかないのですが(どっちにしてもおきまりな展開?)、他人との対立や、誤解などが、住民と、メアリ-恒平との二つの関係でパラレルに語られています。他者を理解するとき、自分の中にある辞書に相手のページを作って、互いのコミュニケーションでそのページに自分で相手のことを書き込んでいくんだよーという比喩なんですが、この相手のページを作るってことが、この世の中ではいかに忘れ去られていることか・・・。いくら判らないからと言って、「他人」としてひとまとめに拒絶するのはなく、相手のための「○○さん」という項目、ページを作って向き合っていくこと。こういったことが、IT革命、ネット恋愛とかいっているうちに、こういったことがどこかにいってしまったのでは・・・。ネットによってコミュニケーションが変わったとはよく言われますがそういう時代だからこそ、自分の「辞書」をコミュニケーションの基本として誰もが確認するべきことなんではないでしょうか。
 なんか、えらく説教臭くなってしまったけど、最後におまけ。
恒平君、あなたは、純粋でいい子すぎる。でも、メアリとの駆け引きは、一流だ。女との駆け引きがあれほどうまければ、悩むことなんかなんにもないぞ。つーか、私もあんなに駆け引きうまければなー・・・
『ネットワーク・ポプリ』
柳原 望著
白泉社 花とゆめCOMICS
(1997.12)
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