式日  

カバナス星人
(2001.2)
 
 東京都写真美術館にて独占ロードショー中というわけで、JR山手線、恵比寿で降車、とぼとぼと構内を歩いていって途中、動く歩道などを経つつ外に出てみるとそこはうわさの恵比寿ガーデンプレイスで、いくぶんわざとらしい煉瓦づくりの、ばかに大きな建物が並ぶその一隅のモダンな写真展示館の1階の奥、なにやら秘密めいた場所でひっそりと上映されているのが、この第十三回東京国際映画祭優秀芸術貢献賞受賞という、微妙なネーミングの賞を受賞した『式日』。で、「芸術貢献」っていったい何?
 庵野秀明&岩井俊二というから、日本ではめずらしいダブル監督による作品か?などという予想を平然と無視するかたちでの岩井俊二の顔アップ。ぎこちない笑顔がなんともいえず。主演・岩井俊二。で、監督が庵野秀明。たしかにその逆だったらと考えるともっとコワイので、まあそれもありかなと思えてくる。それでもやはりセリフのぎこちなさみたいなものはどうしても気になるところ。味といってしまえば、あらかたのことが許される昨今、それでもやはりおかしいものはおかしいと言いたい。それにしても、やっぱりすごいキャスティングである。岩井俊二に続くのが、松尾スズキ、林原めぐみ、大竹しのぶ、村上淳で、そのまま演劇でも始められそうなメンバー。さて、で、いったい何が始まるのかと期待は否応にも高まるが、そこで始まってしまう庵野秀明プライヴェート・ワールド。 式日とは「儀式を執り行う日」のことであるとパンフレットにはあって、広辞苑第四版にもそう書いてあるから、たぶんそれには間違いない。そして「誰しもが持っている自分だけの式日、つまり誕生日を迎えられない少女」の物語が、この映画『式日』であるという。「みんな病んでいる。そして私が一番病んでいる」と、ここまでくればもう完全に庵野節というやつで、つまりはちょっとビョーキな感じの女の子が出てきて、彼女に翻弄されつつもそれを救おうとする主人公=岩井という人間関係図が出来上がる。さてこの主人公、カントクと呼ばれる、なにやら映像関係(というかアニメーション)のお仕事をしている人らしい。さらに物語の舞台は工業地帯=庵野秀明の故郷、山口県宇部市でのロケーション。って、まんま監督の自己投影じゃん、と、わざわざ突っ込みを入れるのも面倒なほどである。
『式日』
監督
庵野秀明

3/10まで、
東京都写真美術館で公開

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